介護の現場では高齢者の健康をいかに守るかが大切である。風邪をひいたとき、体力が弱っているときなどは、食べることが重要だと言われている。栄養を十分に補給して体力を上げれば、病気に対抗する活力が生まれるためだ。
高齢者の食を考えるうえで特に大切なのは、口腔環境が健康かどうかである。8020運動が推進されているが、これは80歳まで20本以上の歯を維持するためだ。20本の歯を維持できれば、ほとんどの食材を食べられるからだ。
歯の本数が減ってしまうほど咀嚼力は衰え、食べられるものは限られてくる。本当に好きな食べ物を食べられなくなるのは、人生において大きな損失だ。咀嚼力を維持するためには、食後の歯磨きが必須となる。
高齢者は唾液の分泌量が減少するため、口腔の洗浄能力が衰えている。歯磨きができない環境にあるなら、うがいだけでも行うことが大切だ。歯の隙間に食べかすを残さないことが重要であり、これを徹底していれば虫歯菌の発生を抑制できる。
高齢者の食事づくりでは、可能な範囲で咀嚼してもらうことを意識しよう。人は噛むことをしなくなると、咀嚼力が衰えてしまうのだ。
完全なる流動食にするのではなく、噛める程度に刻むなどの対策が必要である。例えば生のニンジンは多くの高齢者にとって硬いが、小さく刻めば噛むことができるようになる。また茹でてやわらかくするなど、調理法を工夫するのも得策だ。
介護士が高齢者の食を考えるときは、自分目線ではなく高齢者になった気持ちで考えることが大切である。